2012年05月12日
「すみません、裏の土手の辺りに猫がいるみたいなんですけど、入って見させて
もらってもいいですか?」
と悲痛な顔つきの20代くらいの女性がやってきたのは数日前のこと。
このあたりに引っ越してきてまだ日も浅いと言う彼女は、14歳の猫がいなくなって探していた。
しかし土手に猫はいなかったようで、しょんぼり帰っていこうとしていて、私が
「もし何かチラシとかあったらもらえませんか?」
と言うと、その人は急に涙目になって
「ありがとうございます」
と1枚、猫の写真や特徴、連絡先などが書かれたチラシをくれた。
加えて
「あと何枚かいただけたら近所の猫を飼っている人たちにも言ってみますけど・・・」
と言うと、涙を拭きながらあと2枚くれて、悲しそうに帰って行った。
私は犬も猫も飼ったことがないし、どちらかと言うと動物は苦手な方だ。
それなので彼女の気持ちはあまり分からないと思うけれど、でも、家族がいなくなったと思えばそれはつらい。
なのでご近所さんにチラシを渡し、子どもたちにも話して、普段は気にしない
近所の猫たちを私なりによく観察してみた。
子どもたちは「事件だ!」とばかりに大騒ぎで探していたけれど見つからずにいた。
そうしたら、昨日、その女性が事務所に猫が見つかった報告とお礼を言いにわざわざ来てくれた。
彼女の顔は晴れやかで、私はそれがとっても嬉しくて、心底「よかったですね」と言うことができた。
彼女がたずねて来て以来、猫というよりも、その女性の不安そうな心細そうな姿と、
涙のたまった大きな目が頭に残っていたような気がした。
正直こちらは何もしていないのでそれを彼女に伝えると、チラシをもらってくれただけで癒されたとのこと。
うー、そんなこともあるのか、と申し訳ないような嬉しいような気持ちになった。
いや、嬉しかった。こちらこそありがとうという気持ちになった。